松田真呼インタビュー『蘇り食』

マクロビオティックとの出会い

マクロビオティックとの出会いは、子供を妊娠したのがきっかけでした。

元々は美術系の学校を出てデザインの仕事をしていて、仕事が面白くて結婚もしないんじゃないかと思っていましたが、めでたく結婚して、2~3年後には子供も授かりました。

高齢出産の域に入っていましたので、これが最初で最後かもしれないと思い、それなら自分で生みたいと直感的に思いました。

その時にマクロビオティックのことや玄米菜食のことを知り、それから自宅出産のことなど調べて助産院にも行きました。

「この不自然な世の中で自然に生みたいというのは、そちらの方が無理があるでしょう。生活スタイルや食生活から自然なものを見直していかないと難しいと思いますよ」と助産婦さんに言われて、確かにそうだと思いました。

それ以来、マクロビオティック、ベジタリアン生活は20年になります。

好奇心が旺盛で何でもトライする方なので、始めてみると身体が喜ぶというか、美味しいと感じました。他のものを食べたいと思わなくなったんです。

それまでは、お酒もたしなんでいましたし、コーヒーも毎朝飲んでいました。仕事がらお化粧もばっちりしていましたが、ノーメイクになりました。

マクロビオティック妊娠・出産というのは月の暦や自然の法則の中にありますから、その感覚が食事とともにうまく私の中に入ってきたのです。

人間は生きている命を食べ物としていただいて、自分の命になっているわけですから、それを子供の命として繋いでいきたいという思いがとても強くなりました。そんなことがきっかけでいきなり変わってしまったんです。

女性はそうだと思うんですが、子供がお腹に入ると感覚が敏感になるんでしょう。今思えばお腹の子供がそういう食事を求めていたのだとも思えます。

その時に食事のチカラというか、命のある野菜やお米のエネルギーというものをとても強く感じました。

そんな生活の中で農家さんに会いに行ったり、将来的には自給自足の生活を夢見るようになっていました。

 

RAW(ロー)フードから和RAWへ

和RAW自給自足のエコビレッジで暮らしたいという夢がありましたので、そういう所を訪ねて歩いていたんですが、そんな時、11年前にハワイでRAWフードに出会いました。

マクロビオティックとRAWフードというのは、真逆のように言われることがあります。マクロの方は、RAWフードは体を冷やすと言いますし、RAWフードの方はマクロは過熱のし過ぎで酵素が生きていないというんです。

私は、真逆のように見えても、命をいただくという観点で見たら根底は同じじゃないかと思います。生で美味しいものは生で食べれば良いし、冬の寒い京都で雪の降る中、冷たいグリーンスムージーを飲むこともないと。

健康になりたくて、幸せになりたくて始めているのであれば、もとは一緒なわけですから。生まれてきた生を楽しむために、食べることもその一つです。芸術も音楽も絵もすべてそうですよね。

私も最初は、マクロビオティックにガチガチでしたから「ハワイに行ってパパイヤなどをたくさんを食べた方が帰ってきて亡くなった」などという記事を読んで衝撃をうけていました(笑)。体を冷やすから秋ナスはだめ?「どうしよう!食べちゃった!とか。

身土不二と言いますし、日本は四季の素晴らしい国ですから、その時季時季のものを食べていれば良いのです。

冬は家族で温かい鍋を囲む喜びもあった方が良いですし、寒い時は温かいものが気持ちがホッとします。そこに生の大根おろしが乗っかったりして酵素があるんですよ。

ドボ漬けや千枚漬けのお漬物もありますし。スグキなどの発酵食もいっぱいあります。マクロビオティックでもそういったものを食べていらっしゃると思いますし、発酵食品は生じゃないけど、酵素が生きていて「生」ということも言えます。

和RAWのケーキ

私のRAWフードは西式甲田療法から始まりました。豆腐一丁、ニンジンすりおろし100g、大根すりおろし100g、生玄米。「少食は世界を救う」という考え方も大好きなんですけど、本当に命が危ない状況では頑張れますけど、大抵の方は病気が治ったら元の普通の華やかな食生活に戻ってしまいます。

そうするとかえってリバウンドが怖いんです。断食されている方がお饅頭10個たべてしまったり(笑)。餓鬼道に走ってしまいます。

日本人は我慢が美徳とされる所がありますので、反動が怖いです。それより調和ということで行っているほうが体にも負担が無いのではないかと思います。

身体によいと言っても一人で食べる病人食よりは、皆で美味しいものを食べたいですし、RAWフードを取り入れたのも、一つはその華やかさもあるんです。

日本のマクロビオティックは美味しくて滋味深くていいんですが、色はどうしても茶色っぽくなりますから、子供さんを自然食で育てたいと思っても、お誕生会に招かれて行ったときに、見た目で負けてしまうとか、「あっちのほうを食べたい」となります。

RAWフードは素材が生きていますから、そのままの色でわくわくする魅力があるのでビジュアル的に取り入れてもらいやすいです。

それ以来「和」のRAWフードを提案してきました。

調和の「和」と日本の「和」で、瑞穂の国のお米、発芽前発酵玄米を使ったRAWフード、和RAWです。お米には種としての命がこもっていて、それが芽吹くときに一番パワーがある。そのエネルギーをいただくということです。

バリの棚田

 
バリに出会う

ハワイでエコビレッジと和RAWに取り組んで、タロイモ畑で米作りをしようというプロジェクトも進めていたんですが、土壌の違いもあってなかなかうまくいきませんでした。

そんな時、2012年にバリに出会ったんです。

日本の原風景に重なるようなところもあり、棚田と稲作と大好きなハワイのココナッツとの両方があって、人との出会いもあったので、ここだったらできるかもしれないとピンときました。それで2012年11月からバリに通い始めました。

インドネシアには1400以上の島があって、それぞれ特色があり、言語も食も様々です。その中のヌサ・ペニダ島でエコビレッジを、スンバワ島でオーガニックファームを展開しています。

 

エコビレッジ「アラム・ヌサ」

ヌサ・ペニダという島でアラム・ヌサという宿をしているんですが、アラムは天然・自然という意味でヌサは島という意味です。

島全体がパワースポットといわれているところで、バリ・ヒンズーのお寺がたくさんあり、聖職者やお坊さんになられるための最後の修行に来られるところなんです。

バリの神様バリではまだまだアニミズムやすべてのものに神が宿るといった信仰が息づいています。バリの世界観というのは見えない世界が8割なんです。

私たちの世界というのは目に見える世界しか信じませんが、あちらでは病気になっても聖職者(マンクー)や霊能者(バリアン、ジェロ)の所に行きますし。そういう存在が普通に市民権を持っていて、いかがわしいものや怪しいものとは考えられていません。

人間界は人間の都合のよいようにできていますが、宇宙や自然のルールはそうはできていません。昔の日本がそうだったように、バリの歴では月の満ち欠けのリズムで生きています。

自然とともに暮らすということがどんなにすばらしいか、島で暮らしていると自然と五感が研ぎ澄まされてきます。

現代の日本の方はどうしても頭(思考)が勝ってしまっているので、その素晴らしさを体感していただくための場所を作りたいのです。

その島の村人たちとともにエコビレッジを始めているところです。

樹海の中に立っているんですが、竹・バンブーなどの自然素材だけで作っていて、気持ちよく寝られます。水回りは気持ちよくしないと私たちには使えないので近代的にしています。

もちろん、虫や小動物が多くて、「私は駄目」とおっしゃる方もあるんですけど、自然の力、パワーの方が勝っているので、来られると気にならなくなるみたいです。

蚊は皆さんやっぱりだめなので、蚊帳をご用意してます。

建物やインテリア、照明なども私がデザインしています。

デザイン画を描いて、設計はしていただいたんですが、あとは大工さんと共にずっとついて動いていたので、ここ2年間、土建屋さんの親父さんみたいなことをやっていました。食の仕事で行ったはずなんですが(笑)。

建物も炭素埋設法という方法で、この村はティンジャジャン村と言って竹の村という名前なので竹炭を5メートルの深さに埋めて、癒しの磁場「イヤシロチ」を作ってその上に立てています。

日本のきめ細やかな文化とは違い、あちらは何でも大雑把なのですが、百姓という通り、何でも自分たちでやってしまいます。炭なども驚くようなおおらかさで作ってしまいますし、大工仕事もそうですが、それで回っていっている社会なんです。

食べられるジャングル

畑の方も少しずつ進めて行っていますが、食べられるジャングルを作りたいと思っています。

オーガニックフルーツ現地で作る作物は、もともとそこで作られていたもので、自家採種できた伝統野菜です。土地は厳しいので、命があふれているというか、その分強いものができるんです。

初めは欲張ってRAWフードで使う食材や自分たちの食べたいものを作ってみましたが育たないんです。ですから日本流を持ち込むのはやめました。

自然農と言っていますのはあまり手を入れなくて、キャッサバなどは苗を差し込んでそのままです。パパイヤなんかは食べた種をピッと飛ばしておくとすぐに生えてきますし。スーパーフードと言われているモリンガとか、パッションフルーツ、ドラゴンフルーツ、もういろんなものができるんです。食べ物はそこかしこにありますし。散歩しているだけで、フルーツや野菜などが食べきれないほど収穫できるという状態です。

スンバワ島のオーガニック・ファーム

スンバワ島という島では2年前からオーガニックファームを始めました。

火山島なので決して肥えた土地ではないのですが、ヌサ・ペニダよりはましなのです。自然農と言えば聞こえが良いですが、ケミカルなものに侵されていない土地を探していたので、荒れ地のようなところです。

泉の水を引いて、島の農家2家族の方にメインでやっていただいています。穀物を確保することが一番大事で、バリ・パティという古代米を6haに栽培してもらっていて、あと大豆、小豆、トウモロコシも作ってもらっています。南国なので成長が早くてお米も3期作れます。

一貫して自分たちで作ったもので食事を提供したいと思いますし、現地でも自然農、有機農が無くなってきているので、それを残すためにも、農家さんと一緒にやっています。

スンバワ島に行くには、バリ島から2日間かかります。船で途中の島に渡り、陸路横断して、また船に乗ってという経路です。採れたものはアラム・ヌサでの食材に活用しています。

現地の方が作る組合のようなインドネシアのシステムがありまして、将来的には農業法人を作っていこうと思っています。ヤヤサンという日本でいうNPO法人のようなものです。

島の農家の方たちはモンサントやラウンドアップなどのことは知っていて、世界的な動勢の中でこういう所も狙われますので、良くないということをご存知なんです。全部がココナッツ畑や、トウモロコシ畑に変わってしまって、外国のためだけに彼らの伝統的生活文化を根底から失ってしまうということは見えているんです。

この土地で出来るもので、本当のものを作っていって、1ヘクタール当たりの上がるものはわずかでも、まず自分たちが食べる分と、理解して来てくださる方たちに供給していくことから始めたいので、それを販売して採算ベースに載せていくことは考えていません。

オリジナル料理の創造

ここでお出しする食事は、野菜中心のビーガン・オーガニック、マクロビオティックがメインで、和RAWも取り入れて現地の料理を合わせたオリジナルデトックス「蘇り食」です。

来られた方は皆さんおっしゃってくださいますが、本当に蘇りますよ。

和RAWオリジナル料理麹菌や酵素などは現地の自然由来のものです。大豆発酵食のテンペもインドネシア発祥ですし、バリ・ヒンズーのセレモニーで神様にお供えする米を発酵させたお菓子、発酵した芋とか、麹菌とかの文化が息づいているのです。

ガドガドというピーナッツ・ソースにちょっと味噌を足すとか、醤油を垂らすとかすると、すごく合います。食材もワラビなどに似たようなものが多く、山菜や野草系です。

ビジュアル的にも綺麗で、オペラピンクのソースはドラゴンフルーツを使ったものです。食事は味もそうですが、身体中の細胞がワクワクしてくるような見た目も大事にしたいですね。

これは内容としてはある意味、介護食・病人食のようなもので、生玄米を使った西式甲田療法をもとにビジュアル的に整えて作らせてもらっているものです。

マヨネーズもお米を材料としていますし、野菜とあと少しのナッツ以外はすべてお米が材料です。

バリ伝統の薬膳、ジャムウやコンブチャという飲み物もありまして、それを取り入れて薬草・ハーブをつかったジュースを作ったりしています。インドネシアの薬草を使ったウコン・ベースの飲み物(ジャムウ)と日本では紅茶キノコと呼ばれているコンブチャです。

島の暮らし

島の子ども達バリ本島でもそうですが、島の人たちは貧しいながらも、自分たちの島はパラダイスだと思っていますし、他にどこへ行く必要もないと言います。お金もたくさん要りませんし、使い道も限られているのです。

1番大切なのは神様ごと。2番はご先祖様と家族。あとお酒を飲む人は自分たちで作るココナッツ酒。吸う人は少しのタバコがあって、友達と話せて音楽があれば最高だから、それ以上のものはいらないというのです。

仕事のプライオリティ(優先順位)はとても低いです(笑)。

ただ学校教育においては、中学からお金がいるんです。その月千円が出せないんですね。それで畑を売ったり、伝統産業である織物を売ったりして、子供さんを学校へ行かせておられるんですが、それでも無理な時は小学校卒業して親の手伝いなどをしています。

島の子ども達どうしても行かせたい場合は出稼ぎに行ったりもしますが、村人同志で都合つけて助け合ってもいます。

ここでエコビレッジ事業を始めて、お客様にも来ていただき、お金が回るようになったら、出稼ぎに行かなくても、子供たちを学校に通わせることができるようになると思うんです。

 
えなスタイルの提唱

現地の伝統文化を残していくという活動も始めていまして、その一つが手織りの布です。

バリでは神様ごとの正装はこの手織りの布を腰に巻くんです。島ごとに独自の織りがありますが、それがモダンなんです。

糸を染めるだけで1か月くらいかかって、織りで1週間から10日かかります。皆さんプライドを持ってらっしゃいます。模様はすべて宇宙や自然界から取り入れています。

昔の日本のように伝統的手仕事が生活の中で受け継がれてきたのですが、今グローバル化の中で失われつつあります。それを私たちが現代生活に生かすことによって、微力ながらも支えられないかなと願っているのです。

オーガニックコットンを育てるところからすべて手作りなので、身に着けていただきたいんです。洗うほど肌になじんできます。

こういう自然なものを身に着けると、自然の息吹が感じられます。人間は土に触れたり、森林浴をしたり海水に身を浸したりすると気持ちよいですね。そういう優しい気持ちを取り戻してほしいのです。

「えな」というのはインドネシア語で、美味しいとか気持ちいい、心地よいという時に使う言葉です。衣食住を通じた心地よい暮らし、そういう感覚を私たち現代人はなくしているんじゃないかなと思います。

以前は食事からだけのアプローチをしてきましたが、なかなか解っていただけません。女性の方もお仕事をされてますし、忙しくて生活に余裕がなく、美味しい野菜があってもそれを料理できないので、出来合いのものを買って来てということになります。

便利で豊かになって、物に一杯囲まれて生活していますけれど、ゆっくり料理を作ったり、家族で向き合って食事をしたりする時間さえなくしているんです。

そういう中でもお洋服だと簡単に身に着けてもらえたりもします。現地の手染め・手織り布で、使いまわしのきくドレスや、インドネシアスタイルにアレンジしたり、下着まで手がけています。家内制手工業で、自分でデザインして自分で作ってモデルもしているんです(笑)。エコビレッジの制服にも使用しています。

食器も命ある食べ物を入れる器なので、えなスタイルで作りだしたりしています(笑)。すべて手作りで、現地の人に作ってもらうとおおらかなのでサイズもまちまちです。チーク材などで仕上げはココナッツオイルのみです。

生活すべてに自然の息吹を感じられるものを提案していけたらよいなと思っています。

 
再び日本へ

こういうところにいると、自然というか神様は必要なものは全て与えてくれているなあと思いますね、空気、光、水、大地、薬草もそうですが生きていくために本当に必要なものはそこかしこに溢れています。

現代日本の社会では、経済活動のために不必要なものが溢れていて、そのためにみんな疲れてしまっています。人間本来の感受性や五感が閉ざされている人が多いので、講演や料理教室などをしても、残念なことにその時限りで、お家に帰られると家族に理解が得られないとか、やはりオーガニック野菜は高いとかで、続かないんです。

私は日本人として日本の方を対象に考えているので、旅行という形で、こういう所で1週間でも、丸ごと体感していただきたい。そして自分自身のために自然の一部であることを思い出してほしいのです。

現代社会は不安と恐れで出来ていますので、貯金はたくさんしておかないと、生命保険にしっかりと入っておかないと、ということでグローバル企業だけが儲かるようなシステムに出来ています。

そんな不安や恐れから解放されると生きているだけで喜びですし、何もいらないです。動物はそうですね。そういう感覚を味わえる場所を作って体験していただいた方が、講演やクラスなどで話すより早いなあと思って、日本を出てみたわけです。

日本での活動は、ほぼ開店休業状態でしたが、またぼちぼち再開していきます。

こういうえなスタイルを日本で紹介できるアンテナショップを京都でこの夏オープンする予定です。日本の人はアラム・ヌサで癒され、島の人たちには収入にもなって、子供たちも学校へ行ける、うれしい循環になればいいなと思っています。

バリでは、「ぼちぼち」ということを「プランプラン」というんですが、「パスラー」ということばもあり「人事を尽くして天命を待つ」といった生き方の人が多いのです。

1日待っても船がこないということが普通にある社会で、私たちもそのペースになれてしまっているので、日本に帰っても「プランプラン」と「パスラー」でやっていこうと思っています。

出典:一般社団法人 愛善みずほ会 会報誌『特集 七十周年記念』号より抜粋